少子化は政府の国策だった『2100年、人口3分の1の日本』

今でこそ悲願になっている「人口増」も、1960〜70年代の日本政府にとっては悩みの種だった。

2100年、人口3分の1の日本 (メディアファクトリー新書)
2100年、人口3分の1の日本 (メディアファクトリー新書)
鬼頭 宏 (著)


2015年、日本の人口4500万人。楽観的に見ても6300万人。今から40年後には外国人が半分になっていないと日本の人口は維持できない(このように本書ではなんとも衝撃的な未来予想図が展開される)…
が、しかし!
日本政府が過去たどってきた人口政策も十分に衝撃な内容だった。



先進国の証・少子化
日本の少子化は政府主導で始まった。
1974年、戦後2回目の人口白書『日本人口の動向』は副題を「静止人口を目指して」として政府の出生抑制の強化を明言している。
日本政府がそのように人口抑制を目指した理由は、なにか。
1960〜70年代、植民地支配から解放され独立した発展途上国では、産業開発と並行して、著しい人口増加が起きていた。世界人口は2%/年で増加し、「人口爆発」の真っ只中。日本はそんな中にあって「経済発展に成功した先進国」として、途上国に模範を示さなければならなかった。雇用不安からの治安悪化などはなんとしても避けなければならない問題だったのだ。
それから30数年、日本は人口減少を2005年に「実現」している。今でこそ問題となっているが、人口減少社会への移行はいつか目指した社会の実現だった。



日本以上のスピードで少子高齢化するアジア

老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき (中公新書 1914)
老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき (中公新書 1914)
大泉 啓一郎 (著)


1960〜70年代の日本にとって少子化が「先進国の証」だったことと同様、先進国化するアジアは総じて少子高齢化している。しかも、かつての日本以上のスピードで。
日本の歴史人口学を専門とする著者の盲点だろうか、『2100年、―』では移民が無尽蔵であるかのごとく書かれている。しかし、はたして現在の「移民提供国」が少子高齢化してもなお若者を放出し続けるだろうか。とてもそうは思えない。人口ボーナスはあまりに魅力的だ。この「人口ボーナス合戦」にどう対峙すべきだろう。


老いていく世界で僕たちはどう生きるべきなのだろう。



@ymkjp