サンデル雑感「これからの将来についての話をしよう」

生サンデル
サンデル教授の来日に併せて、NHK収録の観客が募集されていまして、2000字くらい書いて、応募したところ当選。
いそいそと、東大の安田講堂まで、生サンデルを拝んで参りました。
概要は以下の引用のとおり。

人気の「白熱教室」の日本出前授業が実現した。
ハーバード大で空前の履修者数を誇るマイケル・サンデル教授(57)の来日特別講義が25日、東京大(東京都文京区)で開かれた。
身近な題材から問いを投げかける有名な対話型講義に聴衆が積極的に参加し、本家さながらの熱い討議が繰り広げられた。
http://www.asahi.com/national/update/0825/TKY201008250419.html

以前来日された際の千葉大での講演には30名足らずの研究者や学生しか参加していなかったと聞きますから、メディアの力はすごいですね。
確か、東大NHK収録では8000名からの応募であったと聞きました。


これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学あまなつShopあまなつで見る同じレイアウトで作成


東大と早川講演そして本場ハーバードとの違い
僕が参加した東大の授業は、記事にもあるとおり時間も延長され、まさに”白熱”していました*1
東大の講演では、[http://bit.ly/9EPMvh:title=27日に行われた早川書房主催の講演]よりも参加者の英語での発言が多く、レベルが高かったです。ネイティブ並に流暢な学生もいて、身につまされる思いで、同時通訳にかじりついていました。ちなみに、[http://bit.ly/aN1oh0:title=サンデル教授はゆっくり話される(動画)]ので、同時通訳は必要ないくらい簡単に聞き取れます。
年齢層も違いました。
あと、本場ハーバード大学とはもちろん内容のレベルの違いは感じました。当然といえば、当然ですが。
議論に参加している人でも、政治哲学や思想史を踏まえていない人はいました。むしろそれでも議論に参加できるのが、いいところですね。
身近な例から正義について考えるというサンデル流の授業システムの設定のお陰です。
でも、議論のかみ合わない聴講生をうまくさばくサンデル教授は素晴らしい能力の持ち主だと実感。



サンデル鼎談の内容
東大の収録では、サンデル教授と井上教授と小林教授の鼎談もありました。
ここでは、コミュタリアン vs. リベラリスト といった論争があったわけではなく、主に、サンデルの講演への感想と、ソクラテス方式に関する質問などでした。
おそらく、大学教員の間でも、ソクラテス方式は大いに注目されているのでしょう。
実際サンデルは20代のころから論客としてだけではなく、教員としても評価されていたそうです。



政治哲学を理解するための入門書
先日、コミュタリアンとしてのマイケル・サンデルがいう正義や公正などについて知るためへの適切な入門書を読みました。
『公共哲学とは何か』です。
著者は、東大での講演にも参加されていた山脇直司教授([http://twitter.com/naoshiy:title=Twitter@naoshiy])です。
政治哲学を理解するための補助線が多数引かれておりおすすめできます。



サンデル講演の雑感
まず、サンデルの正義論のような最先端の学問が日本で大々的に広まったことには大きな意味がありました。
サンデルが重視するアリストテレスの公共性は、近代のカント以降からの哲学的潮流からの大きな転換と言えますから、それの最先端が日本のお茶の間まであふれたのは意義があります。
しかし、現在の日本に必要な政治哲学はコミュタリアニズムよりもむしろ、リバタリアニズムであるように思われます。
リバタリアニズムはそれ自体に大きな欠陥はありますが、ひとつのツールとしてはとても重要な視点をしめしています。
リバタリアニズムの入門書としては『リバタリアン宣言』がいいと思います。
さきほどの学術的というよりは、かなり砕けた書き方がされていて入門としてはおすすめできます。


以上、サンデル講演の感想でした。
より個人的には、入門編とは言え、ハーバード大学での学問的な最先端の人物に生で触れたことで、圧倒されました。
そして、学問的には、逆に少し諦めがついたというか、自分のもう少し近い将来について考えようと思わされ、目の前の勉強に邁進するしかないと思いました。
あと、英語ももっと勉強しなきゃいけないと感じた。すごく萎えたけど、がんばるしかない。


Written by [http://twitter.com/YMKjp:title=サンデル追っかけ@YMKjp] ([http://twilog.org/YMKjp:title=Twilog])

*1:私は講堂の2階から聴講して、挙手もしましたが、残念ながらサンデル教授から指差されることはありませんでした