舌と耳で楽しむ池袋チャイナタウン

池袋チャイナタウン 〜都内最大の新華僑街の実像に迫るあまなつShopあまなつで見る同じレイアウトで作成


都内在住の方でもご存知ないかもしれない。池袋駅北口。
池袋駅西口の北側にあるのだが、そこら一帯を「池袋チャイナタウン」と呼ぶ。



大きな地図で見る【A】の辺りが「池袋チャイナタウン」


チャイナタウンに中華のお店がない?!
池袋チャイナタウンというからにはもちろん中華の店はある。しかし横浜の中華街のような感覚で足を運ぶと肩透かしを食らうことになる。ただ漫然と北口周辺を歩いても中国系の店はなかなか発見できない。事実、池袋西口で数年アルバイトをしている私の知人でも気づいていなかった。中国系の店は200件以上もある*1のにも関わらず、だ。なぜならばそれらの多くの店は雑居ビルに入居しているのだ。横浜や神戸の中華街のようなシンボリックな楼門もない。しかし目を凝らせば雑居ビルにかかる中国語の看板を多く発見することができる。また、池袋チャイナタウンでは、中国系の店はなかなか発見できなくとも、いやでも耳にはいってくるものがある。中国語だ。中国語の新聞も多く配られている。新聞を配るおばちゃんはパワフルだ。少しでもその新聞に興味を示そうものなら新聞を手に押し付け中国語で話しかけてくるというかまくし立ててくる。そう、池袋チャイナタウンは目ではなく、舌と耳で味わう場所なのだ。



日本化されていない本場の中華
上の地図でちょうど【A】がある場所に[http://r.tabelog.com/tokyo/A1305/A130501/13009855/:title=知音食堂]という店がある。食べログでも77件の口コミがある人気店だが、ここのお店に限らず池袋チャイナタウンの店は本格的な中華料理を提供している。私は中国人留学生とつれだってこの知音食堂へ行ったが、中国人も認める本格派の味(辛い!)だった。この辺りの店は四川料理が多いのである。そこに日本人向けに歪められた中華料理はない。端的に本格派。深みはない。ストレート!



池袋へ集まった新華僑
なにごとにも経緯というものはあり、いつしか人はそれを歴史と呼ぶようになる。池袋北口に位置する「池袋チャイナタウン」もその例外ではない。ここが「池袋中華街」と呼ばれないのには確かな歴史的経緯に裏付けられた理由がある。そこを構成する中国人が違うのだ。神戸や横浜の老華僑に対して池袋の彼らは新華僑と呼ばれる。具体的には、1980年代に加速された中国の改革開放運動以降に日本にやってきた者が新華僑と呼ばれ、それ以前に日本へやってきていた老華僑とは区別される。また、池袋へ多くやってきたのは中国東北部の新華僑である。先述したように池袋チャイナタウンに四川料理が多いのもそのため。池袋の安い家賃や、池袋の人々の胃袋を支えた居酒屋などが彼らの主な働き口となって新華僑を吸収した。丸一日働いてその疲れを池袋チャイナタウンの食堂で落としていったのだ。



新華僑たちの抱える問題
そんな池袋チャイナタウンの新華僑たちもいくつかの問題を抱えている。新華僑たちが提唱した「東京中華街構想」における地元商店街との摩擦はメディアで取り上げられ、一部の熱心な日本人国家主義者を刺激するきっかけとなった。他にも、新華僑間の値下げ競争、新華僑の2世の問題、合法就労者の増加に伴うサービス業の変化、中国人犯罪組織の虚実、祖国の隆盛、などなど。非常に勢いがあっておもしろい地域となっている。私としては引き続きウォッチしていきたいと思う。文脈を踏まえずいうので突拍子もなく聞こえるかもしれないが、個人的には池袋チャイナタウンが東京中華構想として東アジアのアートの中心地として機能してほしいと思う。アートの突破力を、ここで発揮してほしいなぁ。


Asian@YMKjp

*1:中国人が経営、もしくは中国人を相手にするする店や事務所。2010年8月現在