道州制は横並びでなく競争

「国土の均衡ある発展」からの脱却
地域社会の問題を解決するために道州制が提唱されている。
地域社会の問題は主に人口の減少によって生じている。
この人口減少を、改善すべきか否かで言えば国の成長という視点からすれば改善すべき問題であると言える。
※そもそもGDP信仰やら経済成長の重視はやめるべきとう方は『経済成長って何で必要なんだろう?』を 参照のこと*1

今までの日本では「国土の均衡ある発展」という横並びの地域に対する精神があった。「地方交付税」という制度もその精神にのっとったものである。
そして現在、まちづくり運動などでは過疎に抵抗するためのプロジェクトなどが発足している。他にも、地域おこしといって、貴重な若者を地方に呼ぶ運動や、限界集落を維持しようという運動がある。
こういった”地方の生き残りありき”の問題設定に疑問の目を差し向ける必要がある。
一人当たりのGDPを上昇させるという意味での成長という目的においては、地域間の格差を是正させるということは必ずしも必要ではないのである。



道州制はどのような視点から議論されるべきか
道州制の目的は、地域間の競争意識の促進である。
地域間で競争原理が働き、日本全体でより経済成長のために必要な環境づくりがなされるためには、地域分権は良い影響を与えるポテンシャルを有していると言ってよいだろう。
そこで、道州制の議論において財界(経済界・産業界)が流れを促進していることは指摘できる。

財界は多額の租税負担に直面するプレイヤーであり、非効率な統治制度によって行政コストが割高となれば、それが租税負担に跳ね返ることを理解している*2

企業はグローバル化した競争においては、租税の負担が軽くて住む国や地域で生産活動を行う必要がある。しかし、国内で生産を行い、雇用の維持などを通して国民に幅広く貢献するためには、日本国内の行政を効率化し、租税負担を小さくしていかなければならない。
また、財界は下記のような不満を有していた。

現在の都道府県が行う産業政策に対しては、国際的な地域環境層の中にあってはやや小粒であるとの印象を持っていたであろうし、国の地方支分部局と都道府県との二十行政の非効率性も肌で感じていた*3

つまり、空洞化した都道府県の役割を道州がカバーするだけでなく、さらに国の支分部局を吸収するような道州制を目指せば、行政の効率化のみならず産業政策の強化を行うことができるであろう。
もちろん、行政が先導してイノベーションを起こしていくのではない。行政の役割りは、インフラの提供や税制面での優遇などあくまで縁の下の力持ち的なものである。

Written by @YMKjp (Twilog)


*1:この本を書評した小飼弾さんのブログは必見(経済発展そのものを日本に絞らずに世界という視点でとらえている)http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51228546.html

*2:林 宜嗣. (2009). In 21世紀政策研究所 (Ed.), 地域再生戦略と道州制. 東京: 日本評論社.

*3:林 宜嗣. (2009). In 21世紀政策研究所 (Ed.), 地域再生戦略と道州制. 東京: 日本評論社.